細菌


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細菌

(さいきん)

バクテリア。原生物の総称。 一般的には真正細菌のことをさすことが多い。

真菌は真生物で構造が異なる。 大きさは1〜5μm。菌体を染色した上で顕微鏡を使うと観察できる。

細胞壁はグラム陽性、陰性では構造が異なる。 グラム染色で判定する。

形状による分類

2分裂により増殖する。 発育して一定の大きさになると母細胞が同一の染色体DNAをもつ2個の娘細胞に分裂する。

増殖に必要な二酸化炭素は細菌自身が生成する。 一部の菌は高濃度(5-10%)を必要とする。

グラム陽性菌

グラム陰性菌

細菌と真菌の中間に位置

英数

リポポリサッカライド。 グラム陰性細菌の細胞壁の外側にみられる物質。 日本語では糖脂質、リボ多糖と呼ばれる。

マクロファージにはLPSの受容体(TLR4)があり、 これがLPSを受け取ると活性化する。

経口したり皮膚に接触しても害はないが、 血液中に入ると強い炎症が起こる。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。多くの抗生物質に耐性を持つ。 肺炎、敗血症、腸炎、髄膜炎、胆管炎等を起こす。 健康な人は菌にふれても発症しないが、弱った状態では重症化する。

Shiga toxin-producing E.coli. 志賀毒素産生性大腸菌、または腸管出血性大腸菌。 赤痢菌の毒素を産生する能力がある。

O157もSTECに含まれる。

(あしねとばくたー)

グラム陰性好気性桿菌または球桿菌。 医療従事者の皮膚に存在することが多く、院内感染の原因となることがある。

感染症の80%はA. baumannii(AB)による。 呼吸器系への感染が多いが、他の器官への感染も見られる。

近年は多剤耐性菌が増加している。

(いんふるえんざきん)

グラム陰性の桿菌。ヘモフィルス属。

1890年代のインフルエンザ流行の際に原因の菌とされたためこの名がある。 実際にインフルエンザを起こすのはウイルス

中耳の感染症、副鼻腔炎、髄膜炎、呼吸器感染症等の原因となる。

治療は抗菌薬による。

(おうしょくぶどうきゅうきん)

食中毒、化膿性疾患(おでき、にきび、水虫等)の原因となる菌。 健康な人の鼻、咽頭、腸管等に分布する。健康者の保菌率は20-30%とされる。

食品の中で増殖する際にエンテロトキシンという毒素をつくる。 菌は熱に弱いが毒素は熱に強く、100度20分の加熱でも分解されない。

酸素がなくても増殖でき、塩分があっても毒素をつくる。

(うえるしゅきん)

クロストリジウムの一種。 生物の内、土壌、水中等に分布する嫌気性の菌。グラム陽性。 老人になると保菌率が高くなる。

熱抵抗性が高く、加熱しても芽胞が生存している場合がある。

食中毒の原因となる。 増殖時に毒素(エンテロトキシン)を産生する。 毒素は熱や酸で容易に不活性化される。

産生する毒素によりA B C D Eの5つに分類される。 食中毒の原因となるのはほとんどがA型。

ガス壊疽を起こす場合もある。

(うれあぷらずま)

細菌の一種。性交渉により性器、のどに感染する。

(えるしにあ)

腸内細菌科の一属。グラム陰性の桿菌。

一部は病原性を示す。

エルシニア・エンテロコリチカ
食中毒を起こす。冷蔵庫内温度(0-4度)でも増殖可能。

エルシニア・シュードツベルクローシス(偽結核菌)
げっ歯類に結核様病変を起こす。 ヒトでは胃腸炎等の病状を起こす。

(えんてろばくたー)

Enterobacter. グラム陰性の桿菌。内、土壌、水中等に存在する。 通常は無害だが、しばしば感染症を起こす。

(えんどときしん)

内毒素。 グラム陰性菌の細胞壁を構成しているリポ多糖のこと。

菌が生きている間には少量が分離される。 菌が死ぬと大量に分離し、生体に様々な影響を及ぼす。

菌が生きている間に放出する毒素はエキソトキシンと呼ばれる。

除去は250度以上の高温で30分以上の加熱が必要。

普段食べている食品の中にも含まれているとされるが、通常はの機能によりほとんど吸収されない。

傷口等から入ると敗血症等を起こす。

(がほう)

一部の細菌が環境の変化により増殖できなくなった場合に菌体中に形成する構造。 厚い殻で覆われており内部で生命を維持する。加熱、乾燥、消毒薬に強く、 100度の加熱にも耐える。完全殺菌には121度で20分の高圧蒸気滅菌が必要。

(かんぴろばくたー)

カンピロバクター属の細菌。グラム陰性のらせん菌。 カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリは感染症の原因となる。

微好気性細菌。 加熱、乾燥に弱いが低温には強く、食品を冷凍しても検出される。

家畜、家禽のに存在する。

感染性胃腸炎の原因となる。5類感染症に含まれる。 潜伏期間は2-5日。少ない菌量でも症状を起こす。 合併症としてギラン・バレー症候群を起こすこともある。

(きょうまく)

多くの細菌が細胞壁の外側に形成する膜。 食細胞に抵抗性を示す。 莢膜をもつ細菌は病原性が強い。

(くおらむせんしんぐ)

細菌どうしが情報を伝達するためのシステム。 伝達には細菌が分泌するクオルモン(オートインデューサー)という物質が用いられる。

細菌はクオルモンの合成機能と、刺激により毒素を生産する機能をもつ。

細菌が増えてクオルモンの濃度が高くなると細菌は毒素を産生するようになる。

(くらみじあ)

Chlamydiaceae.

0.8〜15μmの球状の細菌。グラム陰性。 感染に節足動物の媒介は不要。

代謝エネルギー産生系をもたないため、生きている細胞内でしか増殖できない。 細胞内で封入体を形成し、基本小体、網様体という特異な増殖環を有する。

検査は抗原検査と抗体検査がある。

抗原検査陽性の場合は感染を示す。

抗体検査は血液からはかる。 IgAとIgGを測定する。

病原性のあるクラミジア

トラコーマクラミジア
肺炎クラミドフィラ
オウム病クラミドフィラ

オウム病
クラミジア肺炎
トラコーマ
鼠径リンパ肉芽腫
性病

(ぐらむせんしょく)

細菌を染色して観察することにより菌種を区別する方法。 ほとんどの細菌は2種類に染め上げることができる。

1884年にデンマークの学者ハンス・グラムが考案。

紫色の色素で染めた後、ヨウ素液による色素固定、アルコールによる脱色を行う。

陰性菌は細胞壁が薄いためアルコールを使用すると細胞壁が壊れ色素が流出する。

陽性菌は細胞壁が厚いため色素はあまり流出せず紫色が維持される。

(くれぶしえら)

腸内細菌科のグラム陰性の通性嫌気性桿菌。 厚い莢膜と線毛をもつ。

(くろすとりじうむ)

嫌気性の細菌。内、土壌等でみられる。 無酸素の状態でのみ増殖する。

芽胞を形成するため熱、乾燥、薬剤に強い。

(こそうきん)

真正細菌目バチルス科。グラム陽性。 好気性で耐熱性の芽胞を形成する。 通常棹状。

自然界に広く分布する。納豆菌はこの菌の一種。

アルカリ性、中性の2種のプロテアーゼを生産する。

病原性はほとんどない。

胞子は高圧滅菌しないと滅菌できない。

(しんせいさいきん)

細菌のこと。

(ずいまくえんきん)

グラム陰性の双球菌。 自然環境では生存できず、ヒトが唯一の保菌者となっている。 飛沫感染する。

莢膜の抗原性により13の血清群に分類される。

(すぴりるむ)

スピリルム科の細菌。淡水、海水に生息。グラム陰性。螺旋状。 好気性または偏性の微好気性。

(すぴろへーた)

細長いらせん状の細菌の一種。グラム陰性、芽胞はつくらない。 特有のらせん運動をおこなう。一部は病原性。

(せらちあ)

グラム陰性桿菌。常在菌。 腸内細菌科。

セラチア・マルセッセンスは感染症の原因となる。 病原性は弱いが、免疫が弱っていると症状を引き起こす。

赤い色素を産生する種があり、 キリスト教の故事にちなんで霊菌と呼ばれることもある。

近年は多剤耐性セラチアもみられる。

(せれうすきん)

グラム陽性の桿菌。通性嫌気性菌。芽胞を形成する。 土壌に存在する。

食中毒の原因となる。嘔吐型と下痢症型がある。

日本では嘔吐型が多い。

(だいちょうきん)

腸内細菌科。 内、特に大腸に多く存在する菌。グラム陰性の桿菌。 ブドウ糖、乳糖を分解し、酸とガスをつくる。

一部は病原性。

非病原性のものでも常在部以外の臓器に侵入すると感染症を起こすことがある。

(ちょうえんびぶりお)

海水、の泥中で生息する細菌。グラム陰性桿菌。 魚介類に付着し、食中毒を起こす。

他の食中毒細菌と比べると増殖が速い。塩分を好む。 真水、酸、熱に弱く、真水中では増殖しない。

潜伏期間は2-24時間、激しい腹痛、下痢を生じる。

(でぃふぃしるきん)

ヒトや動物の腸内に住む常在菌。 偏性嫌気性菌、グラム陽性の桿菌。

多くの抗菌薬に耐性がある。 抗菌薬を投与すると内フローラが乱れディフィシル菌が増殖、 トキシンA、トキシンBと呼ばれる毒素を産生し、これが下痢、軟便の原因となる。

重篤時は偽膜性大腸炎を誘発する。

(どくそ)

細菌が産生する物質。 外毒素はワクチン(トキソイド)に使われることがある。

内毒素(エンドトキシン)
グラム陰性菌の細胞壁に含まれる。 細菌が壊れない限り大量放出はない。 外毒素より毒は弱い。に強い。 トキソイド化できない。

外毒素
細胞増殖時に産生されるタンパク質。 単純毒素、複合毒素がある。

α毒素
β毒素
ジフテリア毒素
エクソトキシンA
ベロ毒素(VT1)または志賀毒素
ベロ毒素(VT2)
コレラ毒素
易熱性毒素
耐熱性溶血毒
腸管毒素(エンテロトキシン)
外胞化致死毒素
ボツリヌス毒素
破傷風毒素
毒素性ショック症候群毒素
発赤毒素

(とれぽねーま)

スピロヘータ目の1属。 グラム陰性。 一部は梅毒、フランベジア、ピンタの病原体。

(にゅうさんきん)

発酵して乳酸をつくる菌の総称。 内の善玉菌として扱われる。グラム陽性

酸素はあってもなくても生きていける。

オリゴ糖や食物繊維をエサとする。

(のかるじあ)

好気性グラム陽性桿菌。中に生息。 日和見感染、ノカルジア症の原因となる。

(ばくてりあ)

細菌を参照。

(びふぃずすきん)

ビフィドバクテリウム属の菌の総称。 グラム陽性。 乳酸菌の一種とされるが、酸素のある環境では生きていけない。

ヒト、動物の内で生息。善玉菌の一種。 生物により種も異なる。 腸内では乳酸菌の数百倍存在する。

酸素を嫌う性質がある。 発酵すると乳酸のほかに酢酸も発生させる。

(ぶどうきゅうきん)

ブドウ球菌属のグラム陽性球菌の総称。 菌の配列がブドウの房のようにみえることから命名された。

ヒトや哺乳類の皮膚、粘膜に生息。

このうち黄色ブドウ球菌は病原性が強い。 常在菌だが、基礎疾患をもつ患者の場合は重篤な感染症を引き起こす。

コアグラーゼの有無により大別される。

(ぷらすみど)

一部の菌種がもつ染色体DNAとは別の小さな環状DNA。

(べんもう)

細胞原形質の一部が糸状に伸びたもの。運動性をもつ。 移動、栄養摂取、生殖等を行う。

軸糸と鞘で構成。

原生動物、鞭毛虫、細菌、動物の精子等にみられる。

繊毛より数は少ない。

(ほうせんきん)

主に中に生息する細菌膜をもたない原核微生物。菌糸が放射状に伸びる。

一部は病原性がある。

(ぼれりあ)

スピロヘータを参照。

(まいこぷらずま)

グラム陰性の細菌。通常の細菌より小型で細胞壁がない。 細胞寄生能力はなく自力で増殖する。

鞭毛はなく非運動性。

自然界に広く分布、全ての動植物に寄生する。 ヒトの粘膜にも常在する。

抗生物質はマクロライド系のみ有効。

(ようれんきん)

A群レンサ球菌を参照。

(りけっちあ)

Rickettsiaceae.

リケッチア属の菌の総称。グラム陰性。普通の細菌より小さい。 1〜4μmで球菌または桿菌の形状をもつ。細胞壁はない。 ダニやシラミを媒介として感染する。

生きた細胞の中でのみ増殖でき、宿主の血管内皮細胞内で増殖する。 感染すると小血管に血栓が生じ、血管破綻、壊死をひきおこす。

細胞外では増殖できず単独の状態では急速に死滅する。

テトラサイクリン系抗菌薬が有効。 β-ラクタム系は細胞壁がないため無効。

病原性のあるリケッチア

発疹チフスリケッチア
発疹熱リケッチア
日本紅斑熱リケッチア
ツツガムシ病リケッチア

(りすてりあ)

リステリア・モノサイトゲネス。 河川水や動物の腸管内等に存在する細菌。 グラム陽性、通性嫌気性の短桿菌。

マクロファージに貪食されても殺菌されない。

リステリア症を起こす。

周産期リステリア症では胎児の多くが流産、死産となる。 新生児リステリア症では死亡したり後遺症を残すことがある。

免疫が極端に低い成人では成人リステリア症を起こすことがある。

加熱により死滅する。 4度以下でも増殖でき、10%の塩分濃度でも増殖可能。

化膿性髄膜炎、敗血症の原因となることがある。

(りょくのうきん)

シュードモナス属。に棲息する細菌

ヒトの皮膚やにも常在。 ビオシアニンを産生し、膿が緑色になる。 炎、尿路感染症、皮膚感染症、敗血症等を起こす。 多くの抗菌薬に耐性がある。

(れんさきゅうきん)

溶血性レンサ球菌とも。 連鎖状に配列する細菌。グラム陽性。

鼻、咽頭、口腔、管等に存在する。

A群は多くの疾患の原因となる。


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