radiation.
原子番号84以上の不安定な原子核が放出される粒子の流れや電磁波の総称。 核反応によっても放出される。 原子核は安定になるため放射線を出して他の原子核に変換していく。その際放射性物質が放出する。
高いエネルギーを持ち、物質に照射されると物理的化学的変化が発生する。
生物が放射線を浴びると分子レベルで細胞が破壊される。 分裂細胞は放射線に弱い。
放射線が出す能力を放射能と呼ぶ。 放射性物質には半減期がある。
荷電粒子線 | 実体 |
アルファ線 | ヘリウム4の原子核 |
ベータ線 | 電子 |
陽子線 | 陽子 |
非荷電粒子線 | 実体 |
中性子線 | 中性子 |
(電磁波) | |
ガンマ線 | 高エネルギー光子 |
X線 |
単位
記号 | 量 | |
グレイ | Gy | 吸収線量 |
ラド | rad | 吸収線量 (非SI単位) |
ベクレル | Bq | 壊変率、放射能 |
キュリー | Ci | 壊変率、放射能 (非SI単位) |
シーベルト | Sv | 線量当量 |
レム | rem | 線量当量 (非SI単位) |
レントゲン | R | 照射線量 (非SI単位) |
正の電荷を帯びる。 透過性は最も弱く、紙1枚で防げるが、電離作用は最も大きい。 人体の場合皮膚の角質層で止まる。ただし内部被爆では悪影響は大きい。
原子番号Z、質量数Aの原子核がα崩壊すると原子番号は-2、質量は-4の別の原子核に変換する。
本体は高速の電子。
電子のため負の電荷を帯びる。 透過力はα線よりは強いが、アルミ箔1枚で防げる。 原子核がβ線を出すと原子核内の中性子が1個陽子に変わるため原子番号が1増える。 電子は減るが、電子の質量は核子の質量と比べると0とみなせるため質量は変わらない。 β線は質量が小さいため磁界から受ける力によって曲がりやすい。
電離密度が低いため人体への影響はアルファ線よりは低い。 外部被爆は皮膚に悪影響を与えることがある。
γ-rays.本体は非常に波長の短い電磁波。 原子核内から発生する。
電気的には中性。 磁界内では力を受けずに直進する。 エネルギーはX線より大きく、防ぐには厚い鉛板が必要。
原子核がγ線を放出しても原子番号、質量数は変化せず、エネルギーを放出して安定な状態になる。 物質を透過する能力は最も大きく厚さ数cmの鉛板でなければ防げない。 電離作用は最も弱い。
透過力が高いため外部被爆時の皮膚への影響はベータ線より範囲が広くなる。
X-rays. 紫外線より波長の短い電磁波。 ドイツのレントゲンが1895年に発見したためレントゲン線とも呼ばれる。
原子核の外で発生する。
強いエネルギー、透過力を持ち骨格を除いた生体を通過する。 このためX線撮影は工業的な内部構造の検査に用いられる。
原子番号が大きい元素ほどX線をよく吸収して透過しにくいため、 胃のレントゲン撮影にはバリウム等の化合物が使われる。
シーベルトを参照。
崩壊系列の一つ。 ウラン-ラジウム系列とも。
ウラン238がα崩壊8回、β崩壊6回を経て鉛206に変わる。 質量数は全て4n+2。
ウラン238 | α | 45億年 |
トリウム234 | β | 24日 |
プロトアクチニウム234 | β | 1.2分 |
ウラン234 | α | 25万年 |
トリウム230 | α | 7.5万年 |
ラジウム226 | α | 1600年 |
ラドン222 | α | 3.8日 |
ポロニウム218 | α | 3.1分 |
鉛214 | β | 27分 |
ビスマス214 | β | 20分 |
ポロニウム214 | α | 0.2ミリ秒 |
鉛210 | β | 22年 |
ビスマス210 | β | 5日 |
ポロニウム210 | α | 140日 |
鉛206 | -- | 安定 |
ガイガー・ミュラー計数管を参照。
ガイガーカウンターとも。電離性放射線を検出する計数管。 1928年に考案された。
気体中を放射線が通過する際に気体分子が電離され、 気体放電が誘発されることを利用して検出する。
崩壊とも。
放射性物質に遅い中性子を衝突させると 同じくらいの大きさの原子核2個に分裂する現象。 1938年にハーンとシュトラスマンが発見。 この際核子の結合に使われていた結合エネルギーの一部が開放される。
核分裂すると2-3個の中性子が飛び出し、 この中性子が次の核分裂を起こす。 これを繰り返すと核分裂連鎖反応となる。
1個の中性子だけが連鎖反応を起こしていく状態が臨界と呼ばれる。 1個を超えると核分裂が急激に増える。 1gのウランが核分裂すると石炭3t分のエネルギーが放出される。
水素等の軽い原子核が衝突で結合し、ヘリウム等の重い原子核になる際に 莫大なエネルギーが放出される現象。 太陽のエネルギー源は水素とヘリウムの核融合連鎖反応による。
放射線が物体を通過したときに吸収した放射線の量。 単位はJ/kg、またはGy.
1Gyは1J/kg。
Ci.壊変率、放射能を表す単位。 1Bqの3.7×1010場合の放射能。 現在はベクレルが使われている。
水蒸気の凝結を利用して放射線粒子の飛跡を見る装置。 1911年頃にC.T.R.ウィルソンが実用化。
十分に飽和した気体を急に膨張させると過飽和状態になる。 この際に荷電粒子により気体の分子が電離されるとイオンを核として気体が凝縮し 飛跡に沿って水滴(霧)が生成される。
Gy.吸収線量をあらわす単位。 1Gyは、電離放射線の照射により物質1kgにつき1Jの仕事に相当する エネルギーが与えられるときの吸収線量。
入力パルス信号、放射性粒子を数えるための電子管。
放射線によって人体が受ける影響をあらわすのに使う線量。 放射線の被曝管理に用いられる。 単位はシーベルト(Sv)。
粒子線に分類される放射線の一種。 広義には電子より重いすべての粒子線のことをさす。
炭素イオン線はがん治療で重粒子線として用いられる。 陽子6つと中性子6つで構成。
照射された放射線の量。 X線、ガンマ線を空気に当てたときに発生する電子、陽電子等の電気発生量。
単位はC/kg(SI単位)。R(レントゲン)は非SI単位。 実用上はレントゲンが使われることが多い。
Sv.線量当量、実効線量、等価線量をあらわす単位。 グレイで表した吸収線量の値に経済産業省令で定める係数を乗じた値が1である線量当量。
1Svは値が大きすぎるため実際はmSv、μSvがよく使われる。
放射線荷重係数
放射線 | エネルギー | 係数 | |
光子 | 全エネルギー | 1 | X線、ガンマ線等 |
電子、μ中間子 | 全エネルギー | 1 | |
中性子 | 〜10 keV | 5 | |
10 keV〜100keV | 10 | ||
100keV〜2 MeV | 20 | ||
2 MeV〜20 MeV | 10 | ||
20 MeV〜 | 5 | ||
陽子 | 2 MeV〜 | 5 | |
α粒子、核分裂片、重原子核 | 20 | アルファ線 |
組織荷重係数はICRP勧告の1977年、1990年、2007年の値がある。 2016年現在日本の法令では1990年の値が使われている。
1990 | 2007 | |
生殖腺 | 0.20 | 0.08 |
赤色骨髄、結腸、肺、胃 | 0.12 | 0.12 |
乳房 | 0.05 | 0.05 |
肝臓、食道、甲状腺、膀胱 | 0.05 | 0.04 |
皮膚、骨表面 | 0.01 | 0.01 |
脳、唾液腺 | - | 0.01 |
残りの組織 | 0.05 | 0.12 |
X線やγ線等の放射線にあたると蛍光を発光する特性を示す物質の総称。
放射線を出す原子核を含む物質。
放射線が生物に与える影響を共通の尺度であらわしたもの。 単位はシーベルト。 放射線の種類によって影響が異なるので、吸収線量に修正係数を掛けて求める。
シーベルトを参照。
高速で飛ぶ中性子の流れ。 最も透過力が強い放射線。イギリスのチャドウィックが発見。 原子炉内で発生する。
電気的に中性のため周囲の電気エネルギーの影響を受けず原子の中に自由に入りこめる。
鉛や厚い鉄の板も透過する。 軽い原子核ほど遮りやすい。 水やコンクリートは水素や水素イオンを含むため遮りやすい。
人体への影響はガンマ線よりも大きい。
人体が放射線を受けたときの吸収線量のこと。 旧名称は組織線量当量。
最初の原子数がちょうど半分になるまでの時間。
人間が放射線にさらされること。
外部被曝
身体の外の放射線源から放射線を受けた場合。
内部被曝
放射性物質を体内に取り込んだ場合。
呼吸、食事、傷口から入る。
自然放射線からの被曝は世界平均で年間2.4mSv、日本は年間1.5mSv。
Bq.壊変率、放射能の強さをあらわす単位。
1Bqは放射性物質が1秒に1個壊変する放射能。 名前の由来はフランスの物理学者ベクレル。
壊変とも。 放射性元素が放射線を出して別の元素に変化していく現象。
一つの放射性物質を起点として変化を繰り返し安定物質になる過程のこと。
放射線を出す不安定な核種。
radioactive substance. 放射性核種を持っている物質。
シーベルトを参照。
放射線を出すことのできる能力。 強さは単位時間に壊変(崩壊)する核種の数であらわされる。
単位はベクレル(Bq)。 かつてはキュリー(Ci)という単位が使われていたが、現在は使われていない。
初めて発見されたのはウランの放射能、1896年にフランスのベクレルが発見。 1898年にラジウムの放射能がキュリー夫妻により発見された。
水素の原子核を使用した放射線。 粒子線に分類される。
rad.吸収線量をあらわす単位。非SI単位(CGS系)。 かつてはSI単位だったが、現在はグレイに取って代わられている。
rem.線量当量をあらわす単位。非SI単位(CGS系)。 生体に吸収された放射線が、 1radのX線が吸収される場合と同等の生物学的効果を示すときの線量。
R.roentgen. 照射線量をあらわす単位。非SI単位。 1955年以前は吸収線量の単位としても使われていたが、現在はグレイが使われる。
由来はドイツの物理学者レントゲン(1845-1923)、X線の発見者。