運動機能や骨格の構成、維持に関わる器官。 ヒトの筋肉の半分は骨格筋で構成されている。
筋肉は神経による刺激で収縮をおこし、はたらきを発揮する。
神経細胞が神経筋接合部でアセチルコリンを放出する。 筋形質膜の透過性が変わり、ナトリウムイオンを細胞内に侵入させる。 これにより表面に活動電位が生じてカルシウムイオンが筋小胞体から放出される。
カルシウムはアクチンの調整タンパクに付着し、ミオシン結合部位を露出する。 これをひきよせるようにして筋肉を収縮させる。 収縮はイオン性のカルシウムがあるかぎり続き、筋の収縮エネルギーにはATPが使われる。
分解されたATPを補い再合成のために筋肉内のクレアチンリン酸(CP)が分解される。 更にCPの再合成のために筋肉中のグリコーゲンがグルコースに変えられて利用される。 グリコーゲンがなくなると身体のタンパク質、脂肪、糖質の分解が起こる。
激しい運動をすると酸素の供給が間に合わず、筋肉には乳酸が蓄積する。 乳酸は筋疲労物質ともよばれ、蓄積すると筋肉は運動を継続できなくなる。
運動エネルギーにはATPが使われる。 高エネルギーリン酸結合の貯蔵場所としてクレアチン酸が機能する。
種類による分類
構成 | 随意/不随意 | 核の数と位置 | |
骨格筋 | 横紋筋 | 随意筋 | 多核、周辺部 |
心筋 | 横紋筋 | 不随意筋 | 1個、中心 |
平滑筋 | 不随意筋 | 1個、中心 |
有酸素運動を担う骨格筋、遅筋。ミオグロビンが多い。 疲労しにくい。
筋原繊維を構成する2つのフィラメントのうち、細い方を構成する。
ミオシンと結合するとアクトミオシンを形成する。
顕微鏡で見ると縞模様の横紋が見られる筋肉。 骨格筋(随意筋)と心筋(不随意筋)に分かれる。
アクチンとミオシンが交互に配列することにより横紋の模様ができる。
ミオグロビン尿症とも。 筋細胞の壊死、融解により筋細胞の成分が血液中に流出した状態。 外傷、薬剤、代謝障害、熱中症により起こる。
ミオグロビンが尿細管を閉塞するため、急性腎不全の併発が多い。 ショック、高カリウム血症による心停止が起こることもある。
C7H15NO3。筋肉に含まれる窒素化合物。ベタインの誘導体。 肝臓、腎臓でアミノ酸のリシン、メチオニンから合成される。
L-カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアへ運搬する。
眼球の内外につく筋肉の総称。
筋繊維を構成する。 ミオシン、アクチンという2種類のタンパク質からなる フィラメントが交互にかさなった形をしている。 アクチンがミオシンの上を滑るように移動して筋の収縮、弛緩が起こる。
筋線維の破壊と筋萎縮を伴う疾患の総称。遺伝性、進行性。 ジストロフィーは異栄養の意で、筋肉に栄養がなくなる。
筋細胞。多数の筋原線維が集まり束状になったもの。 下記の2種類があり、ヒトの骨格筋はこれらが混在している。
筋細胞には複数の核が存在するほか、 ミトコンドリアや小胞体等の細胞小器官が存在する。 またグリコーゲン顆粒があり、ミトコンドリアがATP産生に関わっている。
CRE. 筋肉等に存在するアミド化合物。 アミノ酸のクレアチンが代謝されてできる。
腎臓でろ過され尿として排出される。 腎機能が低下している場合は血液中の濃度が高くなる。
閉鎖した筋膜の区域内における組織にかかる圧力の上昇により、組織虚血をおこす症状。
初期症状は疼痛。 進行するにつれ筋肉が壊死し、横紋筋融解症、感染症、高カリウム血症に至る。 四肢切断、死亡に至ることもある。
治療は筋膜切開、合併症治療等。
無酸素運動を担う骨格筋、速筋。ミオグロビンが少ない。 急速な動きが可能だが疲労しやすい。
顕微鏡で見ても縞模様の横紋がみられない筋肉。
内臓、血管に存在する。自分の意思では動かせない。 状況により不随意に収縮や緊張を起こす。 中央に1個の核がある。
横紋筋(心筋、骨格筋)に分布するヘムタンパク質。 骨格筋の赤い色のもと。
赤血球のヘモグロビンから酸素を奪い、ミトコンドリアへ運ぶ。 心筋梗塞時は血中に遊離するため、血中マーカーとして用いられる。
横紋筋融解症等筋肉が融解する病態では尿に大量排出されて赤色になる(ミオグロビン尿症)。
筋肉を構成するタンパク質のひとつ。
分子の一部が酵素としてはたらきATPを分解、 この際得られるエネルギーでアクチンフィラメントと互いに滑り込んで重なり、筋収縮を起こす。
筋肉に異常が生じることで引き起こされる病気の総称。