鎖式構造をもつモノカルボン酸の総称。中性脂肪を構成する成分。 天然には油脂中にグリセリンのかたちで大量に存在する。
炭素が鎖状に連なっており末端にメチル基(CH3)、一方の末端にカルボキシル基(COOH)をもつ。 この間に炭化水素がゼロから複数個結合する。
炭化水素2つをひとつの単位とするため脂肪酸の炭化水素の数は偶数個になる。
二重結合の有無により飽和脂肪酸(二重結合なし)と不飽和脂肪酸(二重結合あり)に分かれる。
二重結合 | ||
飽和脂肪酸 | なし | 飽和結合だけでできている |
一価不飽和脂肪酸 | あり(1箇所) | 不飽和結合をもつ |
多価不飽和脂肪酸 | あり(複数) | 不飽和結合をもつ |
高級脂肪酸 | 通常炭素数11個以上のもの |
合成は細胞質、ミトコンドリア、小胞体でおこなわれる。 原料はアセチルCoA。
糖質を摂取すると解糖により脂肪酸として合成され蓄えられる。 空腹時には脂肪酸が分解され、肝臓での糖新生、筋肉でのATP生成に使われる。
動物性脂肪は多価不飽和脂肪酸が少ない。 植物油、魚油は多価不飽和脂肪酸が多い。
(飽和脂肪酸)
炭素数 | |
酢酸 | 2 |
酪酸 | 4 |
カプロン酸 | 6 |
カプリル酸 | 8 |
カプリン酸 | 10 |
ラウリン酸 | 12 |
ミリスチン酸 | 14 |
パルミチン酸 | 16 |
ステアリン酸 | 18 |
アラギジン酸 | 20 |
(一価不飽和脂肪酸) | 炭素数 | 二重結合数 | 二重結合の位置 | |
バルミトレイン酸 | 16 | 1 | 7 | |
オレイン酸 | 18 | 1 | 9 | |
(多価不飽和脂肪酸) | ||||
リノール酸 | 18 | 2 | 6 9 | (必須脂肪酸) |
γ-リノレン酸 | 18 | 3 | 6 9 12 | (必須脂肪酸) |
α-リノレン酸 | 18 | 3 | 3 6 9 | |
アラキドン酸 | 20 | 4 | 6 9 12 15 | (必須脂肪酸) |
エイコサペンタエン酸 | 20 | 5 | 3 6 9 12 15 | EPA、魚油に含まれる |
ドコサヘキサエン酸 | 20 | 6 | 3 6 9 12 15 18 | ]]DHA]]、魚油に含まれる |
C22H32O2. ドコサヘキサエン酸。n-3系脂肪酸の一種。 青魚に多く含まれる。
エイコサペンタエン酸。IPAとも。 青魚に多く含まれる。 必須脂肪酸。
炭素数は20(イコサ)、5つ(ペンタ)の二重結合をもつ。
血小板の凝固抑制作用がある。
酸化されやすい。
Medium Chain Triglyceride. 中鎖脂肪酸油。 ココナッツ、パーム等に含まれる。 不飽和脂肪酸は含まない。
他の油と比べると体内で効率よく分解されやすく、体脂肪が蓄積しにくい。
通常の油は摂取すると小腸で消化吸収され脂肪組織に一旦蓄積され、肝臓で代謝される。 MCTは小腸から直接肝臓に移動してエネルギーとなる。
沸点が低いため調理には向かず、生食される。
オメガ3系脂肪酸。 多価不飽和脂肪酸の一つ。 常温で液体。必須脂肪酸。
炭素鎖のメチル末端から3番目の炭素に最初の二重結合がある。 非常に酸化しやすい。
えごま油、あまに油、青魚に含まれる。
α-リノレン酸は体内に入るとEPA、DHAになる。
大豆油、コーン油、ごま油、加工食品に含まれる。
現代の食生活では過剰摂取気味とされる。
オメガ9系脂肪酸。 一価の不飽和脂肪酸。常温で液体。
オリーブオイル、べに花油、なたね油等に含まれる。
エイコサテトラエン酸。不飽和脂肪酸の一種。必須脂肪酸とされる。 体内では合成できないが、リノール酸を摂取するとそれを材料に合成されるため 厳密には必須脂肪酸とはされない。
プロスタグランジン、ロイコトリエンの合成原料にもなる。
リノレン酸の一種。 n-3に属する。 アマニ油やエゴマ油、クルミに含まれる。
母乳にも含まれる。
n-3を参照。
n-6を参照。
C17H33COOH. 一価不飽和脂肪酸。油酸とも呼ばれる。 善玉コレステロールを下げずに悪玉のみを減らす作用がある。 酸化安定性が高く、体内での過酸化物の発生が抑えられる。
べにばな油、オリーブ油、ごま油に多く含まれる。
C10H20O2. デカン酸とも。炭素数10個の直鎖状の飽和脂肪酸。 白色の針状結晶。不快な臭いがある。
グリセリドとしてヤシ油、パーム油等に含まれる。
CH3COOH. 飽和脂肪酸の一種。エタン酸とも。 強い刺激臭をもつ。純粋なものは冬季凝固するので氷酢酸と呼ばれる。
酢酸発酵、木材の乾留で得られる。 工業的にはアセトアルデヒドの酸化によりつくられる。
酒類を酢酸発酵させると酢酸を3-4.5%含む食用酢が得られる。
アセチルセルロース、酢酸ビニル等の合成樹脂の原料、写真の定着液等に使われる。
C17H35COOH。オクタデカン酸。 白色の固体。飽和脂肪酸、カルボン酸に属する。炭素数は18。
天然油脂中にグリセリンとのエステルとして存在する飽和脂肪酸。 動植物内の油脂を加水分解すると得られる。
石鹸、界面活性剤、ろうそく、軟膏等の原料となる。
SCFA. 炭素数2-4の脂肪酸のこと。6を含む場合もある。
不飽和脂肪酸の一つ。 トランス型二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸。
トランスは水素原子2つが炭素間の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についている状態。
トランス脂肪酸は動物体内の微生物のはたらきにより少量つくられる。 また油脂の水素添加の際にできることがある。
摂りすぎると循環器系疾患の原因になりやすいとされる。
C15H31COOH. 飽和脂肪酸。白色の結晶。 動植物の油脂中にグリセリンとのエステルとして含まれる。 パーム油、木ろうに多い。
体内では合成されず、食事から摂る必要のある脂肪酸。
不飽和結合をもつ脂肪酸。
シス型とトランス型に分かれる。 二重結合のまわりの構造がトランス型のものをまとめてトランス脂肪酸と呼ぶ。
一価はヒトの体内で合成できる。
多価は合成できないため食品から摂取する必要がある。 構造的に酸化されやすく、劣化しやすい。
メチル基の炭素はオメガ炭素と呼ばれる。 メチル基の末端から何番目に最初の二重結合があるかで オメガ9、オメガ7、オメガ6、オメガ3等に分類される。 n-9、n-7、n-6、n-3と表記されることもある。
炭素間の結合に二重結合がない脂肪酸。 動物性の脂肪に多く含まれる。
飽和脂肪酸の一つ。ドデカン酸とも。 ラウリンとしてやし油、ゲッケイジュ等に含まれる。 白色の針状結晶。
ラウリルアルコールの原料となる。
CH3CH2CH2COOH. 炭素原子数4個の一塩基飽和脂肪酸。
腐敗臭がある無色の油状液体。 水、エタノールに溶ける。
炭水化物、乳酸の酪酸発酵で生じる。
天然では天然には家畜の乳脂内にわずかに存在する。
不飽和脂肪酸のひとつ。
C18H32O2. 不飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸。植物油に含まれる。 血中コレステロールを下げるはたらきがある。 大量摂取すると善玉コレステロールが下がる。
大豆油、コーン油、ごま油に含まれる。
健康に良いとされているが、リノール酸からつくられる物質は アレルギー、炎症、血液凝固、血管収縮促進作用が強いものが多いとされる。
代謝物のアラキドン酸がエイコサノイドを産生し 炎症、がんに結びつく可能性が指摘されている。