呼吸


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呼吸

(こきゅう)

respiration. 外呼吸と内呼吸に分かれる。

外呼吸

身体の外表面、エラ()、を通して外界とガス交換をおこなうはたらき。 血管中の血液を介しておこなわれる。

を参照。

内呼吸

細胞呼吸。 組織細胞が養分としてとりいれた有機物(呼吸基質)を分解してエネルギーをとりだしATPを生産するはたらき。 下記の2つに分かれる。

酸素
1解糖系 細胞質基質 使用しない
2クエン酸回路ミトコンドリアのマトリクス使用する
3電子伝達系 ミトコンドリアの内膜 使用する

酸素
1解糖系 細胞質基質 使用しない
2発酵 細胞質基質 使用しない

英数

(6-ほすほふるくときなーぜ)

解糖系酵素。 フルクトース6-リン酸をフルクトース1,6-ビスリン酸に変換する。 ATPを1分子消費する。

ATP濃度が高いとはたらきが邪魔され反応が進まなくなる。 この際は立体構造を変えて反応をコントロールする。

(ATPごうせいこうそ)

EC 3.6.1.34. ATPシンテターゼとも。

電子伝達系の酵素。ミトコンドリアの膜に埋まっている。

ATPアーゼの逆反応でATPを合成する膜酵素の総称。

モーター構造を持つ。

電子伝達系により膜間に多量のH+が発生すると濃度差が発生する。 H+はこの酵素を通過しマトリックスへ出る。 この際にADPとPi(無機リン酸)とH+が結合しATPとなる。

最大で毎秒約600分子のATPを生産できる。

解糖系を参照。

(あこにたーぜ)

EC 4.2.1.3. クエン酸回路に関わる酵素の一種。

クエン酸、シス-アコニット酸、イソクエン酸の相互転換を触媒する。

(あこにっとさん)

C6H6O6. トリカルボン酸の一種。

不安定なシス型と安定なトランス型がある。

シス型はクエン酸回路でみられる。

(あせちる)

Ac. アセチル基。 CH3CO-。 酢酸から水酸(-OH)を除いて得られる一価の基。

(あせちるCoA)

かつては活性酢酸と呼ばれていた。 CoA(補酵素A)のSH基がアセチル化されたもの。炭素数は2。

生物はアセチルCoAをもとに脂肪酸を生合成する。 このため動植物関係の脂肪酸は炭素数が偶数のものが多い。

食物由来のブドウ糖は細胞質で解糖によりピルビン酸に変わり、 これがミトコンドリアの基質でアセチルCoAになる。 脂肪酸も同様にβ酸化によりアセチルCoAとなる。

(いそくえんさんでひどろげなーぜ)

EC1.1.1.41. クエン酸回路に関係する酵素。

イソクエン酸を2-オキソグルタル酸に酸化する。

(えのらーぜ)

EC 4.2.1.11. ホスホピルバートヒドラターゼ。

2-ホスホグリセリン酸を脱水し、ホスホエノールピルビン酸を生成する反応を触媒する酵素。

解糖での重要な反応のひとつ。 活性発現にはMg2+またはMn2+が必要。

(おきさろさくさん)

クエン酸回路の一員。

リンゴ酸から生成される。 アセチルCoAと縮合するとクエン酸になり、新しい回路に入る。

またC4植物光合成ではオキサロ酢酸が最初に生成される。

(かいとう)

グルコース等の分解過程のこと。 通常は解糖系をさす。 一部の生物は解糖系以外の糖分解系をもつ。

(かいとうけい)

EMP(エムデン-マイヤーホッフ経路)とも呼ばれる。 好気呼吸の第一段階で細胞質基質でおこなわれる。 酸素は必要とせず、NAD+で酸化する。

血液中のグルコース細胞により取り込まれると始まる。 最終産物はピルビン酸乳酸。 グルコース1分子あたり差し引き2ATPがつくられる(2ATPを消費し4ATPを生産する)。

1.グルコースは酵素によりフルクトース6リン酸に変換される。 このときATP2分子を使う。 グルコースは安定した物質のため不安定な物質に変換している。

2.中間産物を経て2分子のピルビン酸に変換され、4分子のATPがつくられる。 変換の際に4つのHが外され、これは電子伝達系で使われる。

この後はミトコンドリア内のクエン酸回路に移る。

(クエン酸回路へ)

(くえんさんかいろ)

好気呼吸の第二段階でミトコンドリアのマトリクスでおこなわれる。 初めにできる物質がクエン酸のためこの名がある。

マトリクスに運ばれてきたピルビン酸はいくつかの酵素のはたらきを受けたあと CoAと結合しアセチルCoAとなる。

アセチルCoAはクエン酸、α-ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸へと変化し、 最終的には新たなアセチルCoAを加えて再びクエン酸になる。

水素は20Hが外され、解糖系で外された4Hとともに24Hが電子伝達系へわたる。 炭素二酸化炭素として排出される。 ATPは2ATPが生産される。

ピルビン酸が供給されれば変換サイクルが何度でも行えるため回路と呼ばれる。

(くえんさんしんたーぜ)

EC.2.3.3.1. (旧EC4.1.3.7.)

CS. クエン酸合成酵素とも。

アセチルCoAオキサロ酢酸からクエン酸CoAを生成する反応を触媒する。

(けんきこきゅう)

呼吸基質の分解に酸素を使わない呼吸。 酵母菌等の発酵微生物や腐敗細菌が細胞質基質でおこなう。

酸素を使えないため有機物の分解が不完全でありATPの生産効率は低い。

(こうきこきゅう)

細胞が通常行う呼吸。 呼吸基質の分解に酸素を使う呼吸でATPの生産効率が高い。

グルコースグリコーゲンを基質とする呼吸の場合は 下記の3つの反応系で成り立つ。

おこなわれる場所
1.解糖系 細胞質基質
2.クエン酸回路ミトコンドリアのマトリクス
3.電子伝達系 ミトコンドリアの内膜

グルコースが不足した場合は脂肪タンパク質も利用される。

(でんしでんたつけい)

水素伝達系とも。 好気呼吸の第三段階でミトコンドリアの内膜上でおこなわれる。

1.解糖系クエン酸回路からまわってきた24HはH+とe-に分解される。

2.H+はマトリクスに残るが、e-は内膜の呼吸鎖と呼ばれる部分にのり、 呼吸鎖を構成するタンパク質上に流されていく。

3.e-は移動とともにエネルギーが減少する。このエネルギーを使ってマトリクスにあるH+が 外膜と内膜の間(膜間孔)にくみ出される。

4.マトリクス側のH+が減少すると膜間孔との間に濃度差が生する。濃度の高いH+は ATP合成酵素上を通過してマトリクスに戻り、この際に放出されるエネルギーがATPとなる。 34ATPが得られる。

5.エネルギーを失ったe-はH+と再合成する際に外呼吸で得られた酸素と結合し、 呼吸の最終産物であるに変化する。

酸素が使われるのは電子伝達系の最後の部分だけだが、この酸素がないと 発生したH+とe-が行き場を失い、解糖系クエン酸回路が停止してしまう。

(とりおーすりんさんいそめらーぜ)

EC5.3.1.1.

TIM。解糖系酵素。 グリセルアルデヒド3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸を変換する。

(はっこう)

嫌気呼吸の一種。 微生物が有機物等を分解し、人間にとって有益な物質をつくる反応。

酸素がない場合解糖系で生じたピルビン酸は 発酵され、乳酸アルコールになる。

アルコール発酵
酵母菌(イースト)等がおこなう発酵。 材料はグルコースで、最終的にエタノール二酸化炭素がつくられる。 醸造酒やパンはアルコール発酵によりつくられる。

乳酸発酵
乳酸菌がおこなう発酵。最終的に乳酸がつくられる。 乳酸はヨーグルト、乳酸飲料に使われる。

ヒトも瞬間的に激しい運動をすると酸素が足りなくなり 筋肉乳酸発酵をおこなう(正確には解糖と呼ばれる)。

(ぴるびんさん)

焦性ブドウ酸。C3H4O3. 酢酸臭のある無色の液体。

ブドウ糖解糖系によりピルビン酸に変化、 これがミトコンドリアの基質でアセチルCoAになる。

酵素によりいろいろな物質に変化する。

代謝経路酵素
酢酸発酵ピルビン酸オキシターゼ 酢酸、二酸化炭素、水
糖新生 ピルビン酸カルボキシラーゼオキサロ酢酸
アルコール発酵ピルビン酸デカルボキシラーゼアセトアルデヒド、二酸化炭素
TCA回路 ピルビン酸デヒドロゲナーゼアセチルCoA、二酸化炭素
乳酸発酵 乳酸デヒドロゲナーゼ乳酸
アミノ酸代謝アラニンアミノトランスフェラーゼアラニン、α-ケトグルタル酸
アミノ酸代謝 アラニンデヒドロゲナーゼ アラニン、水

(ふはい)

嫌気呼吸の一種。 微生物が有機物等を分解し、悪臭を放つ物質や人間にとって有害な物質をつくる反応。

(ふまらーぜ)

EC 4.2.1.2. フマル酸ヒドラターゼ。 フマル酸をリンゴ酸へ変換する反応を触媒する酵素。

(へきそきなーぜ)

EC 2.7.1.1.

解糖系の酵素。 ATPADPに変換した際のエネルギーを利用する。

グルコースフルクトースのリン酸をヒドロキシル基に転移し、 グルコース6-リン酸にする。

肝臓ではグルコキナーゼが反応を触媒する。

(ほすほぐりせりんさん)

C3H7O7P.

PGA. 解糖の中間物質。生物界では3-PGAが最も多い。

(ほすほぐりせりんさんきなーぜ)

EC2.7.2.3. PGK.

ATPと3-ホスホグリセリン酸から、ADPと1,3-ビスホスホグリセリン酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素。

解糖系でみられる。

がん細胞では発現量が増加する。


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